幸せだったあの日々は記憶の扉に閉じこめて――
涙なくしては読めない、ギリシア富豪との切ない愛。
彼の子供を妊娠している――その事実を知ったマーリーは一人物思いにふけっ
ていた。子供の父親であるクリュザンダーは世界を股にかけるギリシア人富豪
で、ふたりはいま一つ屋根の下に暮らしている。妊娠したと打ち明けたら彼は
どんな反応をするだろう? クリュザンダーが二人の関係をどう考えているの
か確かめようと、マーリーは仕事から戻った彼にさっそく問いかけた。「ぼく
らの間に関係などない。きみは“愛人”だ」返ってきた辛辣すぎるその言葉に、
マーリーは凍りつく。だが運命は、さらなる悲劇を彼女に用意していた。